「漆喰」と「珪藻土」の違い

昨今、SDGsをはじめ健康や環境に注目する人々が増えて、「衣・食」のみならず「住」への関心が高まっています。そのような傾向の中、特に注視されているのは「塗り壁」です。

「塗り壁」には、「漆喰」や「珪藻土」がありますが、意外と漆喰と珪藻土の違いについてはあまり知られていません。

見た目の印象も似ていることから、新築やリフォームで塗り変えを検討する際に、「漆喰」と「珪藻土」のどちらを選べば良いのか判断に困っている方も多いのではないでしょうか。

そこで、今回は「漆喰」と「珪藻土」の違いについてご紹介します。さらに失敗しないための塗り壁材の選び方についても解説します。住んでから後悔しないためにも、壁材選びの参考にしてください。

「漆喰」とは?

「漆喰」とは、消石灰を主原料にした建材です。これに藁やスサを混ぜ込み、海藻などから抽出した糊も加えることで、壁に塗ることができるようになります。

また、日本で漆喰の歴史はとても長く、古くからは1300年前まで遡り、建料として使用されたのは、平安時代の神社や仏閣からだといわれています。

 戦国時代では、眩しく輝く白壁が権威や富の象徴として、姫路城や彦根城など城郭建築に使われたり、機能面では耐久性と防火性の高さから壁として城郭や財産を守るために使用されてきました。

現在では、一般家庭でもご自宅に取り入れられていることから、人間の歴史を一緒に刻んできたパートナーといえる存在であるともいえます。

また、「漆喰」には人間の生活に寄り添った様々な特徴があります。
例えば、防火性はその1つです。「漆喰」は燃えにくく、不燃材料として建築基準法で認められた耐火性があります。

この性質から、「漆喰」はビニールクロスより火の回りが遅く、防火対策において優れているといえるのです。仮に壁が火事などで燃えたとしても、自然由来100%で作られた「漆喰」であれば、ビニールクロスなどの人工建材より、有害物質が発生する可能性は極めて低くなります。

また、この他にもシックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドを分解する”抗菌作用”や、強アルカリ性の特性から生ゴミや排水溝など酸性の臭いを中和する”消臭効果”もあります。

このように、「漆喰」には優れた特徴があり、人が生活していく上で起きうるであろう悩みを解消し、かつ環境にも優しい壁材なのです。

「珪藻土」とは?

「珪藻土」とは、珪藻という海や湖に生息している植物性のプランクトンの化石を主原料にした建材です。
「珪藻土」が人類で使用されたのは、古代ギリシャ時代に研磨剤や水に浮く土として軽量レンガで採用されたのがはじまりといわれています。

日本では、第一次世界大戦後に工業的に利用され始め、現在では最も優れた濾過助剤として、生ビール作りなどにも活用されています。

住宅の土壁として本格的に採用され始めたのは、1994年頃からのことです。家の建材としての「珪藻土」は「漆喰」と比較すると歴史は浅いものですが、同じように人が生活する上での困りごとを解消する特徴があります。

例えば、その1つに調湿性が挙げられます。「珪藻土」には目に見えないほど小さい穴が無数に開いています。その珪藻にある穴は、水蒸気との相性が良いことから湿度を調整してくれます。
さらに、耐火性や断熱性もあるため、人が住みやすい空間を作ってくれます。

このように、「珪藻土」は「漆喰」と機能面で同じ効果を発揮する一方で、建材としての歴史が約30年とまだまだ浅いといえます。

「漆喰」と「珪藻土」の違いは?

歴史や特徴は違っても、類似して見える「漆喰」と「珪藻土」の違いについて解説します。

⒈原料の違い

「漆喰」の原料は主に、石灰岩からとれる「石灰漆喰」と、貝の殻からとれる「貝灰漆喰」の二種類があります。
一方で、「珪藻土」は珪藻といわれる藻類を粉にしたものです。この原料の由来が違うことから、「漆喰」と「珪藻土」は下記のように異なる特性があります。

■ 漆喰:空気中の二酸化炭素と反応して自ら固まる自硬性がある
■ 珪藻土:藻類を粉末状にしているため、乾燥するとボロボロと崩れ落ちる

このことから、「珪藻土」を壁材として扱う場合、住宅メーカーは石灰やセメント、粘土、合成樹脂などを加えることで建材として活用しているのです。
使用する原料についてどちらが正しいとか、良いとかではないのですが、ここで賛否が分かれる時もあるようです。しかし、ホルムアルデヒドのような有害物質の放出基準を満たした上で施工に使用するので、安心して取り入れることができます。

一方で「漆喰」に関しては、自ら固まる性質から「過剰なものは足さなくていい」という考えがあります。だからこそ、漆喰は古くからシンプルかつ環境にも優しい建材として成立し、今もなお愛され続けているのです。

⒉消臭効果の違い

「漆喰」と「珪藻土」は、どちらも優れた消臭効果があるため、生ゴミやコンロや換気扇回りの飛び散った油などから漂う、部屋の生活臭を消してくれます

また、「漆喰」には消臭効果だけでなく、抗菌効果もあります。強アルカリ性のためカビや菌、ダニの発生を防ぐ作用があり、清潔な室内環境を保ちます。犬や猫などペットを飼っているご家庭に取り入れると、気になる臭いが軽減できるため、快適な空間を維持してくれます。

⒊調湿効果の違い

「漆喰」と「珪藻土」は、どちらも調湿効果に優れています。しかし、その調湿効果を比較すると、「珪藻土」の方が「漆喰」の約1.2倍高いという結果が出ています。

では、なぜ「漆喰」よりも「珪藻土」の方が調湿効果が高いのでしょうか。その理由は、「珪藻土」の細孔が「漆喰」よりも大きいためです。細孔が大きければ大きいほど、空気中の水分を吸収・放出する量が多くなります。そのため、「珪藻土」は「漆喰」よりも多くの水分を吸収・放出することができ、より高い調湿効果を発揮します。

しかし、調湿効果が高いことが必ずしも良いとは限りません。「漆喰」は、「珪藻土」よりも若干調湿効果は低いものの、強度や耐久性、消臭性、防カビ・抗菌性などの性能が高いという特徴があります。

例えば、湿度が高い環境では、調湿効果が高い「珪藻土」は、多くの水分を吸収し、壁が膨張してしまう可能性があります。
また、調湿効果が高い壁材は、カビやダニの発生を抑制する効果も期待できますが、「珪藻土」は抗菌性がないため、カビやダニの発生を完全に防ぐことはできません。

このように、「漆喰」と「珪藻土」は、それぞれにメリットとデメリットがあります。調湿効果を重視するなら「珪藻土」、それに加え、強度や耐久性、消臭性、防カビ・抗菌性まで重視するなら「漆喰」がおすすめです。

⒋抗菌性の違い

前述したように、「漆喰」には高い抗菌性が備わっていますが、「珪藻土」に抗菌性はありません。「漆喰」は消石灰が主原料で、ph12以上を超える強アルカリ性の性質があることから高い抗菌性を持っています。この強アルカリ性(ph12以上)の環境になると、ほとんどの生物やウイルスは生き残れません。

例えば、中世ヨーロッパでは、ペストが流行した時に家に消石灰をばら撒いたり、現在でも冬場に流行しやすい鳥インフルエンザなどを予防するために消石灰は利用されるほどです。

このように「漆喰」には、高い抗菌性があることから臭いの原因となりうる雑菌を殺菌し、空気を浄化する特性があるといえます。さらに、この抗菌性があることで、シックハウス症候群の発症リスクも軽減してくれるのです。

⒌耐久性の違い

先ほど両者の原料の違いでも触れたように、「珪藻土」は藻類を粉末にして固めただけで、耐久性は低いです。

一方で「漆喰」の原料は、石灰岩からとれる「石灰漆喰」と、貝の殻からとれる「貝灰漆喰」があり、どちらも空気中の二酸化炭素と反応して自ら固まる自硬性があります。そういった原料の違いから、「漆喰」は「珪藻土」よりも高い耐久性を持っていると明言できます。

⒍質感の違い

「漆喰」は塗り壁材として使うと、仕上がりが滑らかで完全に乾いた後ならば、服に汚れが付着するということはありません
反対に「珪藻土」は、表面の質感がザラザラとした仕上がり具合になるため、服が擦れると粉の跡のような汚れが付きやすいです。

クローゼットの中に塗り壁材を検討している方は、服の汚れを気にする必要がない「漆喰」を選ぶと良いでしょう。

⒎価格の違い

一般的な壁材であるビニールクロスと比べると、「漆喰」と「珪藻土」の両方とも約3〜6倍の価格差があります。また、「漆喰」と「珪藻土」の費用を比較すると「漆喰」は下塗りが必要なことに加え、施工が難しいことから「珪藻土」よりも高くなる傾向です。

しかし、高くなるのは下塗りにかかる費用が大半を占めていますので、塗り壁で「漆喰」か「珪藻土」のどちらかを検討しているのであれば、価格の違いだけでは判断しない方が良いでしょう。

「漆喰」と「珪藻土」のどちらを選ぶかは、「景観の好み」や「必要な機能」、「費用」の3軸が必要です。
自宅へ導入し、住み始めてから「やめておけば良かった」というような後悔しないためにも、ご自身の状況を踏まえて総合的に決めましょう。

「漆喰」と「珪藻土」のどちらを選ぶべき?

先ほどまで、「漆喰」と「珪藻土」の違いについて説明してきました。しかし、これらの違いを踏まえて「結局、漆喰と珪藻土のどちらを選べば良いのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。

ここでは、「漆喰」と「珪藻土」のどちらを選択すると良いかお伝えしていきます。

結論から言えば、使用する場所により変わります。なぜなら、「漆喰」と「珪藻土」にはそれぞれメリットとデメリットがあり、どのような場所に取り入れたいかにより採用すると良い壁材が変わるからです。

例えば、キッチン回りやトイレなど生活臭を消臭したい場合は、「漆喰」を選ぶと良いでしょう。また、湿気がたまりやすい洗面台周りには、どちらかといえば、調湿性能が高い「珪藻土」がより適しています。
用途によって、採用する塗り壁材を選ぶと、快適な塗り壁ライフを送ることができるでしょう。

漆喰を塗ると良い場所

前述したように、「漆喰」にも調湿性能はありますが、「珪藻土」よりは劣ります。逆をいえば、「漆喰」は、“日当たり”や”風通しの良さ”、”木造”の建物で漆喰は十分にその機能を発揮します。冒頭でも触れたように、お城の城壁に使われるほどですので、外壁を含め、様々な場所に使うことができるのです。

■ リビング

【漆喰壁をおすすめする理由】
・生活臭が取れる
・空気がキレイになる
・高級感が出る
・家族が集まる場所で落ち着ける
このような理由で、リビングに取り入れる方は多いようです。

例えば、焼肉など鉄板焼きした場合、壁や空気に臭いが充満して衣服や壁に付着した感覚を覚える方は多いはずです。しかし、漆喰壁なら、翌日にはそのような臭いは、消えているといったことも珍しくありません。

また、室内で犬や猫などペットを飼っているとどうしても部屋に独特の匂いが付いてしまいます。しかし、漆喰壁ならこのような”動物の臭い”も薄れるため、来客されてもペットがいることに気づかなかったということもあるようです。

■ トイレ

【漆喰壁をおすすめする理由】
・芳香剤を使わなくても空気がキレイになる
・独特のトイレ臭がなくなりリラックスできる

トイレに排泄物をすると、アンモニアや硫化水素などの悪臭が発生します。これらの悪臭は、空気中に浮遊して、トイレの空間全体に広がります。漆喰壁は、これらの悪臭を吸着して、トイレの空気を浄化します。

また、漆喰壁は、消臭効果だけでなく、調湿性や抗菌・防カビ効果も備えています。調湿性が高いため、トイレの湿気をコントロールして、カビやダニの繁殖を抑えることができます。また、抗菌・防カビ効果により、雑菌やカビの繁殖を抑えて、トイレの衛生面を向上させることができます。

■ 洗面所、脱衣所

【漆喰壁をおすすめする理由】
・調湿効果で鏡が曇りにくい
・湿気がこもりづらくなり、カビや結露が発生しづらい

例えば、冬にお風呂から上がると、洗面台の鏡が曇る経験は誰もが1度は経験しているはず。漆喰壁なら、鏡を見ながらスキンケアをしたいけど、見えないというような悩みを解消してくれます。

また、脱衣所と洗面台が一緒の場合、洗濯機を設置してあるご家庭もあると思います。漆喰壁なら、排水口や洗濯槽からの嫌な臭いも消臭してくれるので、気になる方は取り入れてみてはいかがでしょうか。

■ 寝室

【漆喰壁をおすすめする理由】
・湿気によるカビやダニの発生を抑制し、アレルギー対策につながる
・体臭や寝具の臭いを吸着し、睡眠の質を向上させる
・空気を浄化し、リラックスできる空間を演出する

例えば、アレルギー持ちの方が漆喰の部屋で寝ることでよく眠れて、悩んでいた鼻詰まりも軽減され、翌朝の体調も良いという方もいるようです。

また、朝に起床した時の独特の臭いに悩む方も多いのではないでしょうか。この原因は、寝具に染みついた体臭やタバコやペット、服などから出る生活臭が混じっていることにあります。これらも漆喰壁なら解消できます。

■ 玄関

【漆喰壁をおすすめする理由】
・靴やコートの臭いを吸着し、清潔感を保つ
・空気を浄化し、気持ち良く過ごせる空間を演出する

玄関は外気と接する場所であり、汚れがつきやすい場所です。汚れに強い漆喰壁なら、衛生面も保つことができます。
そして、玄関に充満しがちな靴のこもった臭いなどの独特の玄関臭も、漆喰壁なら消臭効果により消してくれるのです。

家に入った時の第一印象を決めるのは、玄関です。その空間をキレイに整えておけば、いつでも気持ち良くお客様を迎えることができます。

漆喰と珪藻土の違いのまとめ

「漆喰」や「珪藻土」というと、「見た目もよく似たようなもの」「機能面も似ている素材」というイメージを持たれているかもしれません。

ですが、原材料は全く違い、建材として使われてきた年月が全く違います。
「珪藻土」は、戦後に生まれた建材であり、歴史自体は30年ほどでそれほど長くありません。
一方で「漆喰」は、何千年もの歴史があります。それは、メンテナンスの方法や手間から、体に与える影響まで人間にとって適した建材である証拠です。このような関係性は、おそらくこれから先も変わらないでしょう。


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