「暖炉」と「薪ストーブ」の違い

海外では、レンガ積みで土作りの家屋にピッタリな「暖炉」。
一方、家全体をレトロな雰囲気と、やわらかなあたたかみで日本家屋を包んでくれる「薪ストーブ」。

インテリアとしてもオシャレなので、自宅に導入しようと考えている方も増えているようです。
ただ、一般家庭では「暖炉」と「薪ストーブ」にそれほど馴染みがないため、両者の違いについて知らない方も多いようです。

そこで、今回は「暖炉」と「薪ストーブ」の特徴や比較、違いについて解説していきます。

暖炉の種類や導入時の費用や注意点やポイントもお伝えしますので、自宅へ導入をご計画中の方は、暖房器具選びの参考にしてください。

「暖炉」とは?

「暖炉」は、レンガや石材などの資材を活用し、建物と一体で作られる”炉”のことです。
「暖炉」の役割は、炉の中へ薪や石炭を入れて燃やし、炎から生じる放射熱により部屋をあたためることにあります。また、煙は壁の中を伝う煙突を通り抜けて、外に排出される仕組みです。

分かりやすく説明すると、“部屋の中で焚き火をする”ようなイメージでしょうか。

「暖炉」は、“映画や本の世界だけ”や“古びたもの”と思われているかもしれませんが、冬場は稼働するだけであたたかく、家族で暖炉を囲めば一家団らんの場にもなり、デザイン面でもノスタルジックな良い印象を与えてくれる暖房器具なのです。

「薪ストーブ」とは?

「薪ストーブ」は、箱型の銅板や鋳鉄製の本体の中で薪を燃やし、その炎の熱で部屋をあたためる暖房器具のことです。本体に扉がついて密閉できるタイプが一般的ですが、扉がつかずに開放するタイプもあります。

炎から生まれる熱エネルギーは、「薪ストーブ」を中心に広がる輻射熱(ふくしゃねつ)として広がり、部屋全体をあたためてくれます。

“陽だまりのようなあたたかさ”などと表現されるように、遠赤外線効果で柔らかく全体を包み込むようなあたたかさが特徴です。

冬場のエアコンから発する「乾燥した熱風が肌や喉に直接当たるのは苦手」という方にとって、最適な暖房といえます。

「暖炉」と「薪ストーブ」の違いを比較

「暖炉」と「薪ストーブ」は、両方とも薪を燃料とする暖房器具だという点では共通です。

しかし、材質や形、あたたかさなどの視点で比較すると複数の違いがあります。代表的な違いを4つの視点で書き出すと、下記の通りです。

1.材質
2.構造
3.あたたかさ
4.燃費

それぞれ1つずつ順番に説明していきます。

1.材質・設置方法の違い

「暖炉」は、薪を入れる箇所が耐火用のレンガや石材で作られ、炉も壁面に埋め込まれています。

一方で、「薪ストーブ」は、鋳鉄や鋼板製のものが主で、リビングや玄関など部屋の一角に設置するものです。

2.構造の違い

「暖炉」は、基本的にレンガ積みで壁と一体化した構造をとっています。
薪を燃やした熱の大半が煙突から外へ抜け出すため、あたたかいのは暖炉周辺のみとなります。

一方で、「薪ストーブ」は、鋳鉄や鋼板製、スチールから作られています。
薪を燃やした熱は、遠赤外線として鋳鉄や鉄板に伝わり、輻射熱で家全体をあたためてくれるのです。

このような特徴から現代の住宅では、薪ストーブのほうが多く採用されているようです。

他にも、構造上の違いが2つあります。
1つは、「暖炉」には扉がなく、「薪ストーブ」には扉があるということ。

「暖炉」では、焚き火に近い感覚で暖をとります。
一方で、「薪ストーブ」は、扉がついているので、薪に着火した後は扉を閉じて使用します。密閉状態になることで、先ほど説明した輻射熱でじんわりとあたたかくなるのを待つ暖のとりかたをするのです。

もう1つは、「暖炉」と「薪ストーブ」で煙突の形状が違うということ。

「暖炉」の煙突は、壁の中を通って外へ通り抜けます。
一方で、「薪ストーブ」の煙突は、室内から壁に入り、壁の内部を突き抜けて外に出るというものです。

これは、建物と一体型の「暖炉」と、部屋の一角に据え置く「薪ストーブ」の分かりやすい違いといえます。

3.「暖炉」より「薪ストーブ」があたたかい

「暖炉」は、薪を燃やして得られるエネルギーの約9割が、煙突から外に放出されてしまうため、火の直接的なあたたかさしか感じとれません。

反対に「薪ストーブ」は、密閉された空間であたためられた空気が部屋全体に行き渡るため、陽だまりのようなあたたかさになります。

4.「暖炉」より「薪ストーブ」が燃費がいい

燃焼空間へ燃焼用空気の量を調整できるか、否かにあります。
「暖炉」は、一般的に開放型で燃焼室が囲まれていないことから、燃焼用空気の調整はできません。

反対に「薪ストーブ」は、必要な空気量を調整し、燃え過ぎを防げる設計になっています。そのため、薪ストーブは薪が長持ちして燃費が良くなるのです。

「暖炉」と「薪ストーブ」のメリット・デメリット

違いが分かりにくい「暖炉」と「薪ストーブ」ですが、材質・構造・暖かさ・燃費の面で違いがあることを解説しました。
つぎに、「暖炉」と「薪ストーブ」のメリット・デメリットについて説明していきます。

「暖炉」のメリット

「暖炉」は、インテリアとしてもオシャレで、焚き火のように人間本来に近い感覚で使用できます。

【メリット1】 直火で調理を楽しめる

「暖炉」は、直火で調理を楽しめます。炎を活用して、BBQのようにソーセージやマシュマロを焼いたり、ピザを焼いたりすることが可能です。ガス調理では受け取れない、調理の楽しさやおいしさが感じ取れるでしょう。

【メリット2】  インテリアとしてもオシャレ

「暖炉」は、海外のようにオシャレな空間を演出してくれ、インテリア性が高い暖房器具です。電気ストーブのように他暖房器具だとどうしても生活感を感じとってしまいますが、「暖炉」は違います。

「暖炉」を囲む装飾のマントルピースは、飾り棚としても重宝できるので、他オブジェなどの飾り付けができ、部屋のオシャレさをアップさせてくれるといえます。

【メリット3】  焚き火のように直感的に楽しめる

「暖炉」は、火が爆ぜる音、薪からの直接的な木の匂いや、炎の揺らめきなど「聴覚」「嗅覚」「視覚」と五感を使って楽しむことができます。

また、炎の動きには「1/fゆらぎ」と表現される癒しの効果があるのも特徴です。そのため、人間に近い感覚で楽しめる暖房器具といえます。

「暖炉」のデメリット

オシャレさや癒し効果などがある反面、時間や労力、費用がかかるというデメリットもあります。

【デメリット1】  家全体があたたまらない

「暖炉」は、薪に点火してからあたたかさを感じられるまで約2〜3時間ほどかかり、すぐにはあたたまりません。十分な温もりを感じるまでは、電気ストーブや温水ルームヒーターなどの暖房器具を併用する必要があります。

また、「薪ストーブ」とは違い、燃焼時に煙突を通じて大半の熱が外に放出されるため、部屋全体をあたためられる仕組みになっていません。
そのため、点火して3時間経ったとしても、部屋の一部しかあたたまらないのです。

【デメリット2】  扉が無いため火災や火傷には要注意

「暖炉」には、「薪ストーブ」のように火を遮る扉がついていません。そのため、周りのインテリアなどに引火しないよう注意を払ったり、お子さんやペットなどご家族が火傷しないよう気を配ったりする必要があります。

【デメリット3】  導入費用とランニングコストが高い

一般的に、「暖炉」は「薪ストーブ」より大掛かりな暖房器具です。本体価格や、設置に必要な取付費用などの初期費用も高くなります。

また、材質や扉がついていないことから、「薪ストーブ」より燃費が悪いため、薪代も高額です。

【デメリット4】  煙突のメンテナンスは必須

「暖炉」も「薪ストーブ」も共通ですが、煙突の掃除は最低でも年1回は必要となります。なぜなら、煙突にススが付着したままで放置しておくと、煙道火災を引き起こすためです。

なお、煙突をご自身で清掃することも可能ですが、高所作業も伴うため危険です。自分ではできないと感じたら、専門業者へ依頼をして掃除をしてもらいましょう。

「薪ストーブ」のメリット

「暖炉」と同様にインテリアや、薪が燃えた時の炎に癒し効果があります。

【メリット1】  直火で料理を楽しめる

「薪ストーブ」も「暖炉」と同様に、直火で調理を楽しむことができます。加えて、ストーブのトップ部分では、「薪ストーブ」の輻射熱(遠赤外線)を活用し、シチューなどの煮込み料理を楽しめます。

【メリット2】  インテリアとしてもオシャレ

「薪ストーブ」は、「暖炉」と比較してもインテリア性で引けをとらない暖房器具です。どこか懐かしくもあり、オシャレな雰囲気のインテリア好きの方に向いているでしょう。

【メリット3】  部屋全体をあたためられる

「薪ストーブ」は、「暖炉」より熱効率が高く、輻射熱であたたかい空気を作りやすいです。
また、投入する薪の量と吸気口の調整で火力の強弱をつけることもでき、機種によっては火力を弱くして夜中に数時間そのまま稼働させることもできます。

前述したように遠赤外線の効果が働くので、身体を芯からあたためてくれる心地良さを部屋全体に広げることができる暖房器具といえます。

【メリット4】  炎と音にリラックスできる

「薪ストーブ」の扉は、耐火ガラスのものが多く、扉が閉まっていたとしても、薪の燃焼時に生じる幻想的な炎の揺れや音を楽しむことができます。
一度、「薪ストーブ」特有の炎の揺らめきと温かさを体感することでファンになる方も多くいます。

特に広葉樹の薪であれば、針葉樹よりもゆっくりと燃えるため火持ちも良く、種類ごとで違った木の香りを楽しむこともできます。

【メリット5】  停電時でも活用できる

「薪ストーブ」は、自然由来の薪が燃料です。そのため、電気ストーブや石油ファンヒーターのように電気や灯油は使わないため、地震が発生した際に困る停電で使えないという事態は回避できます。

調理、明かり、暖房など1つで3役をこなすことができるため優秀な暖房器具と言えるでしょう。

「薪ストーブ」のデメリット

「暖炉」と同様に、すぐにはあたたまりにくいことやメンテナンスに労力がかかることなどが挙げられます。

【デメリット1】  すぐにあたたまらない

「薪ストーブ」も「暖炉」と同じように、薪に点火してから部屋全体をあたためるまで約3時間ほどかかります。そのため、他の暖房器具と併用することで暖をとる必要があります。

【デメリット2】  調理ができない機種もある

「薪ストーブ」は、「暖炉」よりもサイズが小さく、扉がついているため密閉されることになります。このことから、直火で調理をする時は、炉の内部にクッキングスタンドや鍋が入るだけの空間が必要になります。

【デメリット3】  煙突のメンテナンスは必須

「薪ストーブ」は「暖炉」と同様に、最低でも年に1回、シーズン前に煙突掃除は必須となります。自力清掃は、リスクも伴うため専門業者へ依頼するのも選択肢の1つです。

【デメリット4】  煙が近隣に影響を与える場合もある

具体的な事例を挙げると、住宅の密集する場所では、風向きや煙突の設置位置により煙が近隣に流れることがあります。「薪ストーブ」の煙を気にされる方もいらっしゃるので、家を建てる段階でよく検討しておく必要があります。
そのため、なるべく広い敷地面積を確保できる郊外に立地を探すと良いでしょう。

「暖炉」と「薪ストーブ」の費用

「暖炉」と「薪ストーブ」のメリットとデメリットは分かったところで、気になるのは、“実際にどれくらいの費用がかかるのか?”というところかと思います。

ここでは「暖炉」と「薪ストーブ」の費用について説明します。

「暖炉」の費用

「暖炉」を自宅に導入する初期費用(本体価格+設置工事費)は、300〜500万円ほどです。

さらに、燃料である薪を用意しておく必要があります。この薪は、無料で調達できる場合もありますが、多くの人は購入をしなければなりません。

そして、この薪の費用は、月間で約4万円ほどかかります。
1シーズン(4ヵ月)だと、約16万円の計算です。ただし、ご自宅の広さや使用時間や頻度により使用量は変わるため、目安として捉えてください。

また、最低でも年に1回は煙突の掃除が必要です。
ちなみに、「暖炉」のほうが「薪ストーブ」よりも構造がシンプルでメンテナンスもしやすくなっています。

ただ、ご自身で掃除をするのが難しい場合は、専門業者へ依頼することになります。その際、依頼する費用としては、相場で約2〜5万円ほどです。

このように、導入時の初期費用に加えてランニングコストがかかるのだと理解しておく必要があります。

「薪ストーブ」の費用

「薪ストーブ」を自宅に導入する初期費用(本体価格+設置工事費)は、約200万円ほどです。

「暖炉」と同様に、燃料である薪を用意する必要があります。
全て購入する場合、月間の薪代は約2万円。
1シーズン(4ヵ月)だと、約8万円は必要になります。

また、「暖炉」と同様に最低でも1年に1回の煙突掃除は必要です。ここでも専門業者に依頼する場合の費用は、相場で約2〜5万円はかかります。

このように、「薪ストーブ」の費用は、「暖炉」と比較すると初期費用も抑えられますし、「薪ストーブ」の方が燃費が良いため、薪代も抑えることができます。

暖炉・薪ストーブ設置時のポイントと注意点

つぎに、「暖炉」と「薪ストーブ」を設置する時のポイントや注意点について説明します。

結論からいえば、ご近所トラブルに注意をすることです。
理由としては、「暖炉」や「薪ストーブ」の普及に伴い、煙や騒音などによりご近所トラブルが発生しているからです。

気をつけていただきたいのは、下記の3点が挙げられます。

1.稼働時間
2.近隣への事前説明
3.薪割りの音や薪の保管場所

この中でも特に注意しておくべき点は、近隣で住まわれている方から理解を得ることです。

それを得ないまま「暖炉」や「薪ストーブ」を設置してしまうと、使用後に煙の気流がご近所の方に流れて、ご指摘をいただきかねません。
最悪の場合、使用不可となった場合にインテリアとしてのみでしか楽しめなくなります。

そのため、施工前には必ず近隣の方には、「暖炉」や「薪ストーブ」を設置する旨を説明しておきましょう。

暖炉と薪ストーブのまとめ

「暖炉」や「薪ストーブ」には、「火を直接扱うから危なさそう」「オシャレだけど、高額すぎて購入できない」というイメージを持たれている方もいるかもしれません。

確かに火を扱うので注意は必要ですし、初期費用だけでも約200万円以上はするので決して安くはないでしょう。

ただ、これまでに説明してきたように「暖炉」や「薪ストーブ」には、家族との団らんを楽しめたり、炎に揺らめきに癒されるなど、ネガティブなイメージを塗り替えるだけの魅力がたくさん詰まっています。

また、下記に該当する方は、「暖炉」や「薪ストーブ」が向いている人といえます。

・健康や美容に気を遣いたい
・環境に気を使いたい人

理由は、「暖炉」や「薪ストーブ」が人間の生活に1番寄り添った暖房器具だからです。

そもそも、薪は木から伐りだされたもので、燃やせば二酸化炭素を発生させながら自然に還ります。
そして、木はその二酸化炭素を吸収して成長します。
つまり、循環型のエネルギー消費が可能だということです。

また、自然に近く人間に優しい暖房器具を選ぶなら、家づくりにもこだわるべきです。

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そして、購入後は、薪ストーブオーナー様のコミュニティで、実際に薪ストーブ付きの家に住んでいる方の生の意見やアドバイスももらえるのです。

実際に住んでいる人の体験談より貴重なものはないでしょう。
モデルハウスや完成見学会では、疑問や悩みなど質問していただければ活きた経験からお答えできます。
より一層、薪ストーブの良さを理解していただけるはずです。
ぜひ一度、ご来場ください。

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